283rd Exhibition
─ 風景の記憶 ─
第19回 平澤重信展
2025年 08月15日 (金) 〜 09月01日 (月)
※ 8/23(土)・30(土) 作家在廊
今日の風景、昨日の風景、昔日の風景、そして遠い日の風景、数え切れない風景が重なり合い、幾重にも揺らめくハーモニーが響く時、世界は密やかにその扉を開く。幾多の記憶が柔らかな靄となり、そこはかとない香りを浮かべて揺蕩う、しなやかな記憶の磁場。第19回展、いよいよ自在な広がりを見せる、新たなる時空の中へ。
平澤 重信 Hirasawa Jyushin (1948〜)
平澤重信の描き出すイメージ、それをどう表現したら良いのだろう。どことなくもの哀しいような、うら淋しいような、しかしどこかしら軽やかで柔らかな、懐かしく澄んだ風の吹くような、そんな言葉ではつかみがたい不思議なアトモスフィア。何か漠然としたある気配、そこはかとない風情、とらえどころのない陰影、それとなくにじむ情緒、そんな言葉にはならない雰囲気・空気感を「アトモスフィア」という言葉で呼ぶのなら、その表現の根幹を成すものは、正しくその言葉にならない空気感=アトモスフィアなのだろう。それは大作を描く時により顕著となるのだが、画面に様々なキャラクターは登場
しても、そこに物理的な中心は置かれて居ない。言い方
を換えれば、全てのモチーフはある潜在的な中心を暗示
するが、しかしその中心には何も無い。ただ言葉になら
ない想いだけが、軽やかな風となって吹き渡っている。
平澤重信──独特の詩的宇宙を、柔らかな感性で表現す
る油彩画家。人物・動物・植物・乗物・建物等々、様々
な要素を自在に組み合わせて、独自のバランスで構成さ
れたその画面は、それぞれのイメージがいきいきと響き
合って、どこか懐かしい不思議な物語を紡ぎ出す。その
微妙なバランスで配置される数々のユニークな配役達、
見たところ彼らには上も下もない。全てがここでは等価
であり、その純粋で曇りのない視線ゆえに、透明な詩情
を湛えてみずみずしく現出する時空が、見る者の心を洗
う。微妙な色彩が幾重にも堆積した、深い趣をかもし出
す地塗り、その上で軽やかに繰り広げられる自由な世界
は、いつしか私達の忘れていた無垢の心を、そこはかと
ない郷愁と共に呼び覚ましてくれる。たぶん平澤重信ほ
ど「詩人」という言葉が似合う作家はいない。その作品
の数々はさながら絵によって綴られた詩集であり、世に
「平澤ワールド」と呼称されるその独創的な世界観は、
これからもいよいよ清新な魅力を放ち続ける事だろう。