PRESENT

螺旋の詩学 ─ Firenzeの階段を昇る男   Objet (部分)
螺旋の詩学 ─ Firenzeの階段を昇る男   Objet (部分)

254nd Exhibition

── Genovaに直線が引かれる前に ──

第2回 北川健次展

2023年 05月24日 (水) 〜 06月12日 (月)

 

歪められた位相の幾何学、

不穏なる倒錯の詩学、

謎は明かされぬ犯意を秘めて、

永遠の異界へと封印される。

有りと有る世界の断片を交錯し、

瞠目の錯視劇を展開する、

比類なき幻惑のミクロコスモス

──昨年に続く待望の2回展、

暗箱の闇を絢爛と彩る、

あの官能の魔術を再び。 

 

※ オフィシャルサイト http://kenjikitagawa.jp

Paul Eluardの盗まれた詩文    Objet
Paul Eluardの盗まれた詩文    Objet

北川 健次 Kitagawa Kenji (1952〜)

 

黒く塗られた密やかな箱の中で、絢爛と醸成される幻惑の浪漫、それは不穏に謎めくようなアトモスフィアをまといつつ、ミステリアスな異界を現出させる。鋭利な詩的直感をもとに、解体された無数のエレメントを再構成して創り出された、多様なイメージの錯綜する別次元の時空。このガラス越しに浮かび上がる鮮明な異境を見る時、私達はいつしか非日常の境界に、条理を超えて燦爛たる闇を彩なす、見も知らぬ魔術の領域へと踏み入るだ

ろう。見る者を妖しく誘なって已まない、類例なき「装

置」としてのオブジェ、それは巧みに添えられたタイト

ル=詩的言語のもたらす不可思議の暗示と相俟って、濃

厚な意味を帯びつつも決して解き得ない謎を生起する。

北川健次──駒井哲郎に銅版画を学び、棟方志功・池田

満寿夫の強い推薦で活動を開始、フォトグラビュールを

駆使した斬新な腐蝕銅版で、版画界に比類のない足跡を

刻む。以降、その卓越した銅版表現を起点に、コラージ

ュへ、オブジェへ、写真制作へ、更には詩作や美術評論

へと、ボーダーを超えた自在な表現を展開しつつ、留ま

る事を知らない意欲的な活動を続けて現在に到る。その

極めてユニークな制作は、ジム・ダインやクリスト等の

著名な美術家にも賞讃され、アルチュール・ランボー・

ミュージアムやパリ市立歴史図書館等からも出品依頼を

受けるなど、名実共に国際的な評価を獲得して来たが、

実は多彩な変容を見せる表現活動の根幹は、或る揺るぎ

ない方法論に貫かれている。コラージュ──前世紀の大

戦間にエルンストの「コラージュ・ロマン」という言葉

から始まったこの手法は、以降様々な派生形を生みなが

ら、現代技法として定着するに到っているが、その原義

を最も正統に継承する者として、のみならずその可能性

を極限まで拓きゆく者として、北川健次という存在は他

の追随を許さない。コラージュ・ロマンというエルンス

トの命名は、今や北川芸術の表徴として甦るのである。