PRESENT

アコーディオン弾き (2023)      混成技法 / 6F
アコーディオン弾き (2023)      混成技法 / 6F

266th Exhibition

── 日々賛々 ──

第16回 榎並和春展

 

2024年 04月25日 (木) 〜 05月12日 (日)

※ 04月28日(日) 作家在廊

 

不安定な年頃というのは、何も青春の一時期だけではない、人はいつまでも迷い続けるものだ。そして人は生きて来たように老いて行く、それを誰も避ける事が出来ないのなら、もはや日々を楽しんで生きて行くしかない。今回も、そんな「なにげない日々」への賛歌を。〜HARU

 

※ 今回は、企画画廊「くじらのほね」との合同企画と

  なります。当店では混成技法によるタブローを、く

  じらのほねでは混成技法によるドローイング(ペー

  パーワークス)を、展示致します。西千葉駅を挟ん

  だ二つの画廊による同時開催を、この機会に是非ご

  高覧下さい。「くじらのほね」の詳細は下記まで。

  gallerykujiranohone.com

ドライブ・マイ・カー (2023)     混成技法 / 6F
ドライブ・マイ・カー (2023)     混成技法 / 6F

榎並 和春 Enami Kazuharu (1952〜)

 

「もう既に分かっている事を描いても、面白くない。

 それよりも、何故それに引っかかりを感じたのか、 

 その『想い』の中味を知りたい。

 そして、それを選んだ自分を知りたいと思う」

 

 あたかも長い歳月に風化された石壁のような、深い趣を湛える地塗りの上に、どことなく古いイコンを思わせる人物像が、茫洋と静かに浮かび上がる。修道士・旅芸人・楽師・道化師、そして何処へ向かうとも知れない放浪者等々、そのどこか中世的な作中の人物像は、見る者をいつしか、ゆったりとした瞑想の時空へといざなう。

 思索する画家、榎並和春。未知なる魂の形象を求めてひたすらに自己を掘り下げる内に、その世界は表層的な虚飾を離れた、より根源的な領域へと到る。作風の深化

に伴って技法も大きく変化し、初期の構成的な油彩表現

から、一年間のイタリア滞在を境に、アクリル・エマル

ジョンを自在に用いた、独自の混成技法へと発展した。

 現在は麻布や綿布を貼付したパネルに、壁土やトノコ

等を塗り重ねて下地を作り、インド綿等のコラージュを

自由に交えながら、墨・弁柄・黄土・金泥・胡粉等々、

様々な画材を用いて地塗りを重ね、やがてそこに浮かび

上がるフォルムを捉えて、独特の人物像を現出させる。

おそらくは、その幾重にも絵具を塗り込み、かけ流し、

たらし込み、消しつぶし、また塗り重ねるという作業の

中で、来たるべき「何か」を飽く事なく求め続ける事、

それが榎並和春という画家にとっての「描く」という行

為に他ならないのだろう。それはまた、画家がイタリア

の古い教会や祠で出会い、心打たれた幾多の無名画家達

に寄せる、時空を超えたオマージュなのかも知れない。

 表層的な特異性のみがもてはやされ、精神性が大きく

欠落した現代の美術界において、真っ向から精神の内奥

を指向し、始原の祈りを希求する榎並和春の存在は、こ

れからいよいよその意義を増して行くものと思われる。