272nd Exhibition
── 月京離宮 (つきのみやこのはなれみや) ──
第5回 小林健二展
2024年 10月11日 (金) 〜 10月28日 (月)
わずかに地軸の異なる世界で、密やかに息づく不思議な生き物たち。音もなく帯電して明滅し、柔らかに変容する透明な有機体、その薄明に浮遊するあえかな幻像は、おぼろに揺らぐ微かなモノローグを、沈黙の向こうより語り続けてやまない。待望の第5回展、多彩なヴァリエ
ーションで描き出された、小林健二の新たなる地平を。
小林 健二 Kobayashi Kenji (1957〜)
画家にして造形作家、科学者にして詩人、作曲家にして
思想家、広域にわたる博学をベースにあらゆる分野のボ
ーダーを超えて、幅広い表現活動を行う異色作家。全く時流に左右される事のないその制作は、類例のない現代美術の異才として、全国的に熱烈なファンを持つ。神話的テーマや夢で見た風景・物語等を元に、時に最先端のテクノロジーを制作に組み入れながら、清新な詩情の溢れる不思議な世界を創造し、「現代美術」という特定のジャンルを大きく超えて、多くの人々を魅了して来た。
制作に当っての材料や技法への専門的考察、道具や工具等に寄せる尋常でないこだわりは、知る人の間では最早伝説の域に達しており、それらを広い博識と深い研究に
よって自在に駆使して、斬新なアイディアと柔らかなメ
ッセージに満ちた、特異な世界を創出して現在に到る。
一貫して独自の宇宙観を底流とした、広範な表現活動を
展開する一方で、工作や模型等の製作や研究を通して、
科学的な啓蒙活動にも力を傾け、中でも1997年に出
版された「ぼくらの鉱石ラジオ」は、その精緻を極めつ
つも夢溢れる内容が、世代を超えた好評を博した。以降
そのユニークな研究は、数多くのワークショップを通し
て、心に未だ工作少年を宿す人々を魅了し続けている。
水戸芸術館・三菱地所アルティアム・富山県立近代美術
館・福岡市美術館・福井市美術館等々における大規模な
作品展の他、全国各地の先進的なギャラリーで数々の意
欲的な個展活動を展開し、その都度類例のない世界を提
示して来たその独創性溢れるアートは、これからも現代
美術という範疇を軽やかに超えて、何かを求めるより多
くの人々に、豊かなメッセージを送り続ける事だろう。
「大事なことは、見えないところに潜んでいる。見える
ものは一つの結果に過ぎなくて、見ようとする意志が大
切なんだ。作品を見た人がそれぞれに、自分の中を探検
して何かを見つけられたら、そんな素敵なことはない」