PRESENT

霊峰讃歌 (2017)  26版41度摺 / ed.50
霊峰讃歌 (2017)  26版41度摺 / ed.50

199th  Exhibition

── 平成富嶽景 ──

第16回 牧野宗則木版画展

 

2019年 01月05日 (土) 〜 01月25日 (金)

 

富士をライフワークとして30年、牧野木版を代表する富嶽シリーズは、正に「平成」の歩みと共にあった。元年の大作「光明」から新作「霊峰讃歌」まで、千変万化

の多彩な容相を見せながら、その探求は今もなお尽きる

事がない。終りゆく平成年間の集成として、前人未到の

境地を拓いた革新の伝統木版、畢生の富嶽景を一堂に。 

天地有情 (2014)  35版53度摺 / ed.100
天地有情 (2014)  35版53度摺 / ed.100

牧野 宗則  Makino Munenori  (1940〜)

 

伝統浮世絵木版の技法を20年にわたって修得し、その高度な技術を自在に駆使して、更には独自の新たな発展を加えつつ、かつてない新しい木版画を制作する独創的な現代版画作家。通常の木版制作の常識を遥かに超えて20~50数度にも及ぶ驚異的な重ね摺りを、従来の伝統的な分業によらず全くの単独で手掛ける。よってその制作は長期にわたる複雑な工程を要するため、作品点数は年間に1~2作と寡作にならざるを得ないが、過酷な

作業から生み出されたその木版画には、息を呑むような

鮮やかな色彩が、みずみずしく輝き溢れている。かつて

世界を瞠目させた伝統木版の脈流も、今や時代の波間に

衰退の一途をたどる現状の中で、その伝統をかえって新

しい表現の武器として用い、遂には伝統を超えて「牧野

木版」と呼ぶ以外にない、全く独自の作風に到ったその

軌跡は、北斎・広重から連綿と続く道を現代に新しく展

開した「生きた伝統」の画期的な証しといえるだろう。

自然への深い祈りを秘めて、優麗にして神秘な高い品性

を湛えるその作品は、屈指の浮世絵蒐集で知られる太田

記念美術館や、アメリカのジョスリン美術館を始めとし

た多くの美術館に収蔵され、更にはBunkamura・伊勢

丹・松坂屋等における数多い個展を通して高い評価と賞

讃を獲得し、遂にはニューヨークでも伝統木版の新たな

現在形を世に問うに到った。また近年は、摺り終えた色

鮮やかな版木を裁断して再構成する事により、別種の作

品として甦らせる「ブロックス・アート」を発表し、版

画界初の試みとして大きな注目を集めている。伝統技法

の啓蒙と保存・そして版木そのものの美しさを広く伝え

るため、この新しい表現は牧野芸術の重要な一翼を担っ

て行く事になるだろう。高度な伝統木版と自由な創作木

版を初めて融合させたその比類なき世界は、日本でも唯

一の特異な木版芸術として、これまでも、そしておそら

くはこれからも、他の追随を許す事はないと思われる。