PRESENT

月と星の夜 (2026)          アクリル / 32x32cm
月と星の夜 (2026)          アクリル / 32x32cm

294th Exhibition

─ 月と星の行方 ─

第9回 新井知生展

2026年 7月8日 (水) 〜 7月25日 (土)

※ 7月11日(土)・12日(日)  作家在廊

 

夜空を見上げて、月と星の位置を確かめる。宇宙、その寄る辺なき時空の広がりを、自らに引き寄せる術はあるのか。草花に注ぐまなざしと同じように、この宇宙への意識が受け止められる事はあるのだろうか。 (新井知生)

──澄み渡る夜空の下で、軽やかな詩を奏でる遠い日の断章。待望の第9回展、その懐かしくも斬新な世界を。

月の雫 (2026)  アクリル / 42x42cm
月の雫 (2026)  アクリル / 42x42cm

新井 知生 Arai Tomoo (1954〜)

 

 私にとって絵画とは、世界とつながるための媒体である。自己実現と自己滅却のはざまでなされる制作の繰り返しの中で、最終的に「私」が外界を受け入れ、外界が「私」を受け入れて飽和状態に達した時、自ずから手が止まる。それは「私」が自分を包んでいる世界と等質になり、自分が外側に溢れ出ていく時である。~新井知生

 

アメリカン・ポップアートの洗礼から出発したその画業は、現代美術の最前衛を担うアーティストとして、その後意欲的な模索による多様な変遷を辿ったが、一年間に亘るアメリカ滞在を挟んで、上記の独創的な芸術理念へ

と到った。以降も発表の度毎に、作風は安住する事のな

い変化を続けて、現在も新たな地平を希求する道程の、

未だ長い途上に在ると思われるが、制作の根底を流れる

だろうその理念は、おそらく一貫して揺るぐ事がない。

新井知生──新奇なコンセプトの追求のみに囚われ、い

つしか「描く」という行為を忘れた現代美術シーンにお

いて、徹して描く事への信頼を捨てずに、平面表現の可

能性を拓き続けて来た、稀有の現代美術作家である。当

初より伝統的な油彩によらず、現在のような普及を見る

以前から「アクリル」という画材を採用し、油彩とは異

なる現代の新しい表現を求めて、常に先見的な制作を貫

いて来た。渡米中より完全抽象に軸足を置き、独自の空

間表現を追求して来たが、近年は記憶の断片とも思しき

具象的なフォルムが散見される、更なる新たなフェイズ

へと歩を進めている。顧みれば、作家の住する領域は常

に「間」に在った。意識と無意識の広大な狭間を記憶と

呼ぶのであれば、その領域はかつて画家が、自己と外界

の境界に見出した「空間的な」間から、記憶という言わ

ば「時間的な」間へと変移しつつある。その柔らかに開

かれた境域で、何処か懐かしい世界へと心を放つ時、人

は密やかに交感する、豊かな生命の響きを聞くだろう。