PRESENT

ルドンの運河 (2021)      油彩 / 3P
ルドンの運河 (2021)      油彩 / 3P

234th Exhibition

── 目覚めよと呼ぶ声が聞こえ ──

藤崎孝敏展

 

2021年 11月11日 (木) 〜 11月28日 (日)

※ 11月13日 pm  作家来廊

 

この一年、ブルターニュの寒村から一歩も出る事なく、

画家はただひたすらに描き続けた。描いては潰し、また描いては潰し、内奥の「何か」を形にするために、画家

は絶望的な手探りでそれを追い求める。やがて浮かび上

がった形象は、或る不可思議な実在となって、確かな声

を放つだろう。待望の7回展、新たなる渾身の成果を。

Cauvine Fujisaki in Paris       
Cauvine Fujisaki in Paris       

藤崎 孝敏 Cauvine Fujisaki (1955〜)

 

上辺の虚飾や麗容をことごとく剥ぎ落とし、真っ向から対象の本質を鷲掴みにえぐり取って、そのままカンヴァスに叩き付けたかのような画風と言えば、その類を見ない独創的な表現の一端に、触れ得た事になるだろうか。30代初めに渡仏して、パリのモンマルトル界隈を転々としつつ、時にイタリアやスペイン等々、諸処を放浪する中で、荒々しい激情と憂愁の詩情を併せ持つ、独自の油彩画を確立する。以降、神戸や東京のギャラリーにおける数々の個展活動を通して、熱烈なファンを生み続けて来た。表層の細密的・工芸的な美麗ばかりがもてはやされる現今の美術シーンで、小手先の技芸よりは一貫して血の通った内的な表現を指向し、それによってダイレクトに見る者の肺腑を衝き、胸をえぐるようなインパクトを放つその作風は、極めて特異にして、一度見たら忘

れられないような衝撃を孕む。古くはヨーロッパ古典絵

画の手法を根底に置きつつ、近代のフォーヴィズムやエ

コール・ド・パリのスタイルにも近接しながら、それら

が渾然となって新たな作風に結実したかのような、ある

種反時代的とも言えるその強烈な個性は、反面見方を変

えれば、油彩にしか出来ない油彩ならではの表現を、純

粋に真摯に追求したものと言えるだろう。50代でパリ

を離れ、ベルギーからノルマンディーを経て現在はブル

ターニュに在住、しかし自らの生活に根ざしたストレー

トな内省的表現は、所を変えても全く揺るぐ事がない。

かつてのパリ時代に、画家はこんな言葉を残している。

 

「モンマルトルに居ついてもう永い。どんなに一カ所に

永く住みついても、いつも旅の途中だという感覚から逃

れられない。想い出すという事は眺める事だ。しかし、

時に人々はそれに触れてしまう。そして僕もまた、触れ

た指に筆を持ち替えて描いている。人はどうして喜びに

触れたその瞳で、哀しみに触れてしまうのだろう。僕の

旅は僕の心の中に、絵の具のしみとなって燻っている」