PRESENT

小さな証し (2020)     ガラス絵 / 0F
小さな証し (2020)     ガラス絵 / 0F

217th  Exhibition

── 真偽と虚実 ──

第16回 平澤重信展

 

2020年 07月04日 (土) 〜 07月24日 (金)

※ 12日(日)&18日(土) 作家在廊

 

消え去った音が真実なら、記憶の中で消えない音は虚偽なのか。或いは消えない音こそが真実か。真偽は入り混じり、虚実はそのあわいに霞む。そして今、それらは透き通る時空で溶け合い、しなやかなハーモニーを奏で始める。時世の暗翳を晴らす、新たなガラス絵の世界を。

よく晴れた5月の朝 (2020)      ガラス絵 / 0F
よく晴れた5月の朝 (2020)      ガラス絵 / 0F

平澤 重信 Hirasawa Jyushin (1948〜)

 

平澤重信の描き出すイメージ、それをどう表現したら良いのだろう。どことなくもの哀しいような、うら淋しいような、しかしどこかしら軽やかで柔らかな、懐かしく澄んだ風の吹くような、そんな言葉ではつかみがたい不思議なアトモスフィア。何か漠然としたある気配、そこはかとない風情、とらえどころのない陰影、それとなくにじむ情緒、そんな言葉にはならない雰囲気・空気感を「アトモスフィア」という言葉で呼ぶのなら、その表現の根幹を成すものは、正しくその言葉にならない空気感=アトモスフィアなのだろう。それは大作を描く時により顕著となるのだが、画面に様々なキャラクターは登場しても、そこに物理的な中心は置かれて居ない。言い方を換えれば、全てのモチーフはある潜在的な中心を暗示するが、しかしその中心には何も無い。ただ言葉にならない想いだけが、軽やかな風となって吹き渡っている。

 

平澤重信──独特の詩的宇宙を、柔らかな感性で表現す

る油彩画家。人物・動物・植物・乗物・建物等々、様々

な要素を自在に組み合わせて、独自のバランスで構成さ

れたその画面は、それぞれのイメージがいきいきと響き

合って、どこか懐かしい不思議な物語を紡ぎ出す。その

微妙なバランスで配置される数々のユニークな配役達、

見たところ彼らには上も下もない。全てがここでは等価

であり、その純粋で曇りのない視線ゆえに、透明な詩情

を湛えてみずみずしく現出する時空が、見る者の心を洗

う。微妙な色彩が幾重にも堆積した、深い趣をかもし出

す地塗り、その上で軽やかに繰り広げられる自由な世界

は、いつしか私達の忘れていた無垢の心を、そこはかと

ない郷愁と共に呼び覚ましてくれる。たぶん平澤重信ほ

ど「詩人」という言葉が似合う作家はいない。その作品

の数々はさながら絵によって綴られた詩集であり、世に

「平澤ワールド」と呼称されるその独創的な世界観は、

これからもいよいよ清新な魅力を放ち続ける事だろう。