PRESENT

Small Collection No.421 (2019)   板に油彩 / 31.3x32.7cm
Small Collection No.421 (2019)   板に油彩 / 31.3x32.7cm

204th  Exhibition

──  Toward the origin  ──

第11回 わたなべゆう展

 

2019年 06月05日 (水) 〜 06月24日 (月)

※ 8日(土), 9日(日), 16日 (日) 作家在廊

 

安井賞の受賞から四半世紀を超えて、その揺るぐ事なき立脚点は、未だ始原の息吹を孕む。当初から小手先の技巧や理念に依らず、より直接に生きた手触りを宿すその作風は、見る者になおダイレクトに伝播する、強靭な力を秘めて止まない。わたなべゆう2年ぶりの油彩展、あ

の豊饒なる温もりの中で、今再び原初へと向かう旅を。

 

Small Collection No.399 (2019)   板に油彩 / 15.2x20.4cm
Small Collection No.399 (2019)   板に油彩 / 15.2x20.4cm

わたなべ ゆう You Watanabe (1950〜)

 

 

「物質的平面である事をより強く意識して、いかに美し

 く汚すか、いかに美しく壊すかという事を考える。そ

 して、記憶が発酵して出て来るニオイを有形化する。

 原初的な形の背後にある空気・匂い・古び・汚れ、ま

 たは時間の蓄積による風化、これらの日本人独特と思

 われる美意識が、画面の中に入り込んで来る。これを

 共有された精神風土の記憶として、提示する事は可能

 だろうか。例えば、現代社会が見失いかけている精神

 的な豊かさを、画面に取り込む事はできるだろうか。

 出口を見失ってしまった迷路から抜け出す為には、入

 り口にまで戻るしかない。美術の発生したその原点ま

 で戻って、あの豊饒さと緊張を手に入れたいと思う」

 

大地の匂い、沃野を渡る風、時の限りない堆積を遡行し

た果てに、おそらくは消し難く残るであろう、原初の記

憶。わたなべゆうの原点は、そんな理性の表層には決し

て浮上する事のない、感性の深層にあるように思える。

「記憶に残っている事が、正に描かなければならない事

だ。消しても消しても出て来てしまうもの。くり返しく

り返し表れてくるもの」と本人も語るように、その豊潤

なイメージが溢れる独自の世界は、本来人間が在るべき

場所としての「自然」を、殊に現代の忘れかけた「土」

の温もりと手触りを、見る者に強く喚起してやまない。

幾重にも塗り込まれた重厚なマチエール、生命が多岐に

分化する以前を思わせる始原的なフォルム、その横溢す

る魂をダイレクトに描き出したかのような作風は、いつ

しか精神性が置き去りにされ、小手先の手法ばかりが蔓

延する現代の美術界で、極めて特異な光芒を放つ。しか

し、一種荒ぶる相貌の内は、あくまでも温かい。現代人

の多くが内奥に抱え持つ、テクノロジーの発展するほど

にやせ細るばかりの、ひからびた冷たい精神の荒野に、

その大地の鼓動と体温を感じさせるダイナミックな表現

は、豊饒の風をいきいきと吹き込んでくれる事だろう。