
293rd Exhibition
─ 青の帰還を待つブルターニュの16の奇譚 ─
第5回 北川健次展
2026年 6月6日 (土) 〜 6月26日 (金)
※ 6月6日 (土) 作家在廊
有りと有る世界の欠片が、背理の結界で巡り合う時、幻惑の魔術はイマージュを攪乱し、明かされぬ犯意を封じる。謎めく箱の異空間で、埋もれた記憶は鮮やかに甦りそこには未だ見ぬ境域が、秘めやかに生起するだろう。巧まれたコラージュの錬金術、その新たなる成果を今。

北川 健次 Kitagawa Kenji (1952〜)
黒く塗られた密やかな箱の中で、絢爛と醸成される幻惑の浪漫、それは不穏に謎めくようなアトモスフィアをまといつつ、ミステリアスな異界を現出させる。鋭利な詩的直感をもとに、解体された無数のエレメントを再構成して創り出された、多様なイメージの錯綜する別次元の時空。このガラス越しに浮かび上がる鮮明な異境を見る時、私達はいつしか非日常の境界に、条理を超えて燦爛たる闇を彩なす、見も知らぬ魔術の領域へと踏み入るだろう。見る者を妖しく誘なって已まない、類例なき「装置」としてのオブジェ、それは巧みに添えられたタイト
ル=詩的言語のもたらす不可思議の暗示と相俟って、濃
厚な意味を帯びつつも決して解き得ない謎を生起する。
北川健次──駒井哲郎に銅版画を学び、棟方志功・池田
満寿夫の強い推薦で活動を開始、フォトグラビュールを
駆使した斬新な腐蝕銅版で、版画界に比類のない足跡を
刻む。以降、その卓越した銅版表現を起点に、コラージ
ュへ、オブジェへ、写真制作へ、更には詩作や美術評論
へと、ボーダーを超えた自在な表現を展開しつつ、留ま
る事を知らない意欲的な活動を続けて現在に到る。その
極めてユニークな制作は、ジム・ダインやクリスト等の
著名な美術家にも賞讃され、アルチュール・ランボー・
ミュージアムやパリ市立歴史図書館等からも出品依頼を
受けるなど、名実共に国際的な評価を獲得して来たが、
実は多彩な変容を見せる表現活動の根幹は、或る揺るぎ
ない方法論に貫かれている。コラージュ──前世紀の大
戦間にエルンストの「コラージュ・ロマン」という言葉
から始まったこの手法は、以降様々な派生形を生みなが
ら、現代技法として定着するに到っているが、その原義
を最も正統に継承する者として、のみならずその可能性
を極限まで拓きゆく者として、北川健次という存在は他
の追随を許さない。コラージュ・ロマンというエルンス
トの命名は、今や北川芸術の表徴として甦るのである。