261th Exhibition
── 月夜のモノローグ ──
第18回 舟山一男展
2023年 12月07日 (木) 〜 12月24日 (日)
※ 9,16, 23日 (全土曜) PM 作家在廊
夜も更けて、淡い月明かりが影を落とす頃、アルルカンは独り哀しい仮面の奥から長いモノローグを語り出す。憂愁・孤独・愛憎・夢想……、あらゆる人世の機微を秘めて、美醜を超えた魅惑を滲ませる天幕の下の無言劇。今宵、月影に妖しく浮かぶ、密やかな劇場にようこそ。
舟山 一男 Funayama Kazuo (1952〜)
若き日に出会った異郷のサーカスを原点として、画業の研鑽に連れてモチーフを広げつつも、一貫して「サーカス」というテーマに徹して、不思議な憂いをかもし出す人物像や、郷愁の香り高い異国の風景を描き出す、異色の個性派作家。深い趣をかもし出す地塗りの上に、独特の哀感を湛えて浮び上がる人物像は、一度見たら忘れられないような存在感を持って、見る者の心に強く迫る。
21歳で渡仏、4年に亘ってパリに滞在してエコール・ド・ボザール(国立美術学校)に学びながら、サロン・ドートンヌ、サロン・ド・ラ・ナショナル等の名立たる美術展に意欲的な出品を重ねる。帰国して団体の公募展にも出品するが、元々寡作という事もあって、かなりの時間を費やす大作指向の団体展からは、次第に遠ざかっ
たと言う。現在は無所属で、各地の個展を中心に独自の
活動を展開し、質の高い独創的な作品を制作している。
地塗りの美しいマチエール、その上に描かれた人物の不
可思議な魅力を湛える表情、深く渋い趣を持った色彩、
ハッと息を呑むような対比を見せる明暗の魔術、その寡
黙で静謐な時空から滲み出す憂愁・孤独・愛憎・夢想、
時に閃光のように走る鮮烈な詩情……、作品の前にたた
ずむと、それらの声なき詩(うた)がいつしか深閑と心
に響いて、どこか懐かしい不思議な旋律を奏で始める。
星月夜の下に人知れず浮ぶ、内なるサーカス小屋の天幕
──その下には男がいて女がいて、少年がいて少女がい
て、そして彼らの人生を彩るだろうあらゆる哀歓を、密
やかに描き出す一人の澄んだ眼の詩人がいる。現在、単
なる美人画やイラストの域を出ない作家ばかりがもては
やされる中で、本当の「人物画」を描ける作家がどれほ
どいるだろうか。およそ優れた人物画には、描かれた人
物を超える「何か」が宿る。それは風景画にも静物画に
も同様に言える事だが、舟山一男の芸術はその事実を、
あくまでも静かに、そして鮮やかに提示して止まない。