PRESENT

帰去来 (2019)      混合技法 / 4F
帰去来 (2019)      混合技法 / 4F

215th  Exhibition

── 夢のつづき ──

第12回 榎並和春展

 

2020年 05月06日 (水) 〜 05月25日 (月)

※ 23日 (土)・24日 (日) 作家来廊

 

「何もない所からは何も生まれない。何か引っかかる所からイメージが湧き、形になって行く。それは夢の形とよく似ている。我々は何処に向かうのか?そんな事を思いつつ、夢の続きを描いて行きたい」、時代の暗雲を払う慰藉と祈望の絵画。温かに満ちる12回展の息吹を。

月の光 (2019)      混合技法 / 6F
月の光 (2019)      混合技法 / 6F

榎並 和春  Enami Kazuharu  (1952〜)

 

「もう既に分かっている事を描いても、面白くない。

 それよりも、何故それに引っかかりを感じたのか、

 その『想い』の中味を知りたい。

 そして、それを選んだ自分を知りたいと思う」

 

 あたかも長い歳月に風化された石壁のような、深い趣を湛える地塗りの上に、どことなく古いイコンを思わせる人物像が、茫洋と静かに浮かび上がる。修道士・旅芸

人・楽師・道化師、そして何処へ向かうとも知れない放

浪者等々、そのどこか中世的な作中の人物像は、見る者

をいつしか、ゆったりとした瞑想の時空へといざなう。

 思索する画家、榎並和春。未知なる魂の形象を求めて

ひたすらに自己を掘り下げる内に、その世界は表層的な

虚飾を離れた、より根源的な領域へと到る。作風の深化

に伴って技法も大きく変化し、初期の構成的な油彩表現

から、一年間のイタリア滞在を境に、アクリル・エマル

ジョンを自在に用いた、独自の混成技法へと発展した。

 現在は麻布や綿布を貼付したパネルに、壁土やトノコ

等を塗り重ねて下地を作り、インド綿等のコラージュを

自由に交えながら、墨・弁柄・黄土・金泥・胡粉等々、

様々な画材を用いて地塗りを重ね、やがてそこに浮かび

上がるフォルムを捉えて、独特の人物像を現出させる。

おそらくは、その幾重にも絵具を塗り込み、かけ流し、

たらし込み、消しつぶし、また塗り重ねるという作業の

中で、来たるべき「何か」を飽く事なく求め続ける事、

それが榎並和春という画家にとっての「描く」という行

為に他ならないのだろう。それはまた、画家がイタリア

の古い教会や祠で出会い、心打たれた幾多の無名画家達

に寄せる、時空を超えたオマージュなのかも知れない。

 表層的な特異性のみがもてはやされ、精神性が大きく

欠落した現代の美術界において、真っ向から精神の内奥

を指向し、始原の祈りを希求する榎並和春の存在は、こ

れからいよいよその意義を増して行くものと思われる。