269th Exhibition
── Q・ガーデンの午後 ──
第16回 河内良介展
2024年 07月19日 (金) 〜 08月05日 (月)
※ 07月26日(金)・27日(土) 作家在廊
休日の閉ざされた庭園に、遅い午後の鐘が流れる頃、植物たちは緩やかに目覚め、中空へとその触手を伸ばす。機械仕掛けの歌、浮遊する動物たち、モノクロームの黄昏、錯乱する博物誌、麗しき疑問符の楽園で、世界は軽
やかなエラーを奏でる。鉛筆画の異才による16回展、
今夏も更なる展開を見せる、驚異のワンダーランドへ。
河内 良介 Kawauchi Ryosuke (1957〜)
「鉛筆画」の異才。鉛筆ならではの表現を徹底して追求し、鉛筆画の限りない可能性をひらいて、現在に到る。
一般に鉛筆画の世界では、写実技法の限りを尽くして、人物画であれば細かな皺の一本、植物画であれば繊細な葉脈の一筋までを、克明に描写するその「技術」を信条とする作家が多い。その中で河内良介は、卓抜の細密描写を自在に用いながらも、その次元には自らのスタンスを置かずに、むしろその技術だからこそ描き得る「絵画空間」を、独自に追求して来た作家である。故にその作品では、高度な技術力と豊潤な想像力が、分ちがたく融け合って、類例のない独創的な世界が形成されている。
何処とも知れない異郷に登場する、何者とも知れない人
物達。加えてユーモラスな動物達やレトロな乗物達、あ
るいは奇妙な建造物やアンティークな器械類、それらが
自由にコミュニケートしながら、不思議な詩情に満ちた
独自の世界が展開されて往く。おおむね広々とした草原
と果てしない大空を背景として、縦横に繰り広げられる
物語の数々、そこには伸びやかに解き放たれたファンタ
ジックな時空が、穏やかな静けさの中に広がっている。
見せかけの新奇をてらうでもなく、スタイルの異端を誇
示するでもなく、あくまでも軽やかにしなやかに、しか
し斬新な気概を秘めたその作風は、上質にして極めて純
度の高い、シュルレアリスムの現在形と言えるだろう。
モノトーンの豊かなグラデーションから浮び上がる、豊
饒なイメージに満ち溢れた小宇宙。10B~10Hの全
硬度・20数種にも及ぶ鉛筆を駆使して描き出された、
その驚異的な細密表現に触れた時、モノクローム芸術の
思いもよらない美しさに、見る人は思わず息を呑むだろ
う。東京オペラシティを始めとした美術館等にも、多数
の作品が収蔵され、全国各地のギャラリーでも次々と展
示会が企画される中で、次世代をになう特異な芸術家と
して、いよいよそのユニークな活躍が期待されている。